言い訳禁止

昇太師匠に弟子入りすることが決まったとき、私は大学時代にお世話になった別の師匠のもとへ、あいさつに伺いました。その師匠は、学生相手にも真剣に落語を教えてくださる、面倒見の良い方です。「師匠、入門することが決まりました。こ […]

前座の太鼓

落語家の仕事は大きく分けて「寄席の仕事」と「脇の仕事」があります。「寄席の仕事」とは、浅草演芸ホールや新宿末廣亭、池袋演芸場といった常設の寄席での出演のこと。ここでは一日中、落語だけでなくコントやマジック、曲芸など様々な […]

ほったらかしの背中

「落語は、師匠から手取り足取り教わるものだ」――多くの人は、そんなイメージを持っているようです。ドラマやマンガの中では、厳格な師匠が弟子を前に正座させ、事細かに所作や間の取り方を教える場面がよく登場します。しかし、現実の […]

地雷を踏んで試す

世の中に、楽な仕事などありません。どんな職業にも、その世界なりの苦労や難しさがあります。落語の世界には“正解”を教えてくれる本などありません。師匠方も、いきなり叱るのが当たり前。何をどうすればいいのか、自分で考えて身につ […]

未来予報士

師匠は「ほったらかし」だと言われることが多いけれど、なんだかんだで弟子のことを気にかけてくれている。ある日、突然「お前、天気に興味ないか?」と聞かれた。「天気ですか? とくに興味はないですけど」と答えると、師匠は「気象予 […]

スピルオーバー効果

落語には、大きく分けて二つの流れがあります。ひとつは江戸時代から連綿と受け継がれてきた古典落語、もうひとつは昭和時代以降につくられた新作落語です。私がこの世界に入ったころ、右も左も分からず、ただ師匠の背中を追いかけるだけ […]

落語の世界では、「なまじ学問がないほうがいい」なんて価値観が、いまだに現役バリバリです。「人生、九九とあみだくじができれば十分」みたいな空気すら流れています。そんな世界に、落語史上初の「東大卒」として飛び込んだ僕。入門し […]

立ち読みと夜風と

僕は学生時代、かなり変わり者だと思われていた。中学・高校のころ、体育祭の創作ダンスや集団体操が大の苦手だった。みんなは「なんで踊らないの?」と不思議そうに見るが、僕は「なんで体操服を着て、踊らなくちゃいけないの?」と心の […]

“ビリ馬”の道を行く

大学に入学すると、多くのクラブやサークルが活発に新入生を勧誘していました。私も、せっかくの大学生活ですから、何かしらクラブ活動に参加しようと決めていました。岡山にいたころ、私は極真空手に打ち込んでいました。『空手バカ一代 […]

自習室の隅っこ

高校を卒業してから、読書と司法試験の勉強をしながら、僕の心の中には「岡山から飛び出したい」という思いが強くなっていた。岡山は「晴れの国」と呼ばれるほど気候も穏やかで、食べ物も美味しい。人も温厚だ。だけど、僕にはその穏やか […]