『前座の初席・現金の流れ』

お正月って、世間では「のんびり」するもんですよね。ところが寄席の世界では、お正月ほど命が縮む日はありません。前座のころ、初席に入ると楽屋は戦場です。出演者は倍以上、持ち時間は数分。座布団をひっくり返して、太鼓を叩いて、「 […]

『言葉の夕立』

『言葉の夕立』夏になりますとね、 皆さん口をそろえて言います。 「暑いですねぇ」 ところが落語家は、 暑いほど、うれしい。理由は単純で、夏の噺は“涼しさ”を作れるからです。どう作るか。 夕立が降って、雷が鳴って、縁側で酒 […]

『よそう、夢になるといけねえ』

師走になると、落語家は名作をやりたくなる。年末の噺といえば、「芝浜」です。酒癖の悪い亭主が、女房の嘘をきっかけに酒を断ち、三年かけて人生を立て直す。そして最後、酒を口にする寸前でこう言う。「よそう、また夢になるといけねえ […]

50.鼠穴

遊び暮らし、父の遺産をすっかり食い潰した竹次郎は、とうとう困りはて、成功した兄を頼って訪ねてくる。兄は同じ遺産を元手に商売を起こし、今では表通りに大店を構える身。竹次郎は「いくらでもいい、元手を貸してくれ」と頭を下げる。 […]

49.宿屋の富

寂れた宿屋に、一人の旅人が投宿する。みすぼらしい身なりから、宿屋の主人は「宿代が払えるのか」と心配になるが、男は妙に調子がよい。「おれは田舎じゃ大層な豪家でしてな。奉公人が三百人、長屋門から離れ屋敷まで七日かかる。蔵が大 […]

48.ちりとてちん

町内に住む旦那の家では、碁会のために御馳走をたっぷり用意していた。しかし急に集まりが中止になり、料理が大量に余ってしまった。そこへ呼ばれてやってきたのが、お向かいの褒め上手・竹さん。どんな料理でも「こいつぁ寿命が延びます […]

47.明烏

日本橋田所町三丁目に店を構える日向屋の若旦那・時次郎は、十九歳。真面目一本槍で、部屋に籠もって本を読むばかりの堅物。父の半兵衛は、「商家の跡取りが世間知らずでは客商売が務まらない」と心配し、町内でも有名な遊び人・源兵衛と […]

46.片棒

石町に大店を構える赤螺屋(あかにしや)の主人・吝兵衛(けちべえ)は、若いころから爪に火をともすような倹約で財をなした“大ケチ”として有名である。そろそろ商売の跡目を三人の息子のうち誰かに譲らねばならないが、道楽者に身代を […]

45.長屋の花見

貧乏長屋の面々が、ある朝そろって大家に呼び出される。皆、てっきり店賃(家賃)の催促だろうと青くなっている。十八年払っていない者、親の代から結局一度も払っていない者までいる始末だ。震えるような気持ちで大家の家へ行くと、思い […]

44.鰻の幇間

真夏の昼下がり。野幇間(のだいこ)・一八(いっぱち)は、客探しに四苦八苦していた。金のありそうな旦那衆は避暑や湯治に出かけ、町は閑散。そこへ浴衣掛けで歩く男を見つける。どこかで会ったような気がして「へい旦那、ご機嫌よう! […]