36.妾馬
江戸の長屋に住む八五郎は、酒と女に弱い遊び人。その妹・鶴は町でも評判の器量よし。ある日、長屋の大家のもとへ立派な武士が訪ねてくる。駕籠で通りがかった殿様・赤井御門守が、鶴を見初めたというのだ。奉公に上がるという名目だが、 […]
35.火焔太鼓
古道具屋の甚兵衛は、正直でお調子者、しかも商い下手。儲け話にもつい本当のことを言って逃し、寒いのに家の火鉢まで売ってしまう始末。それでも店が回るのは、切れ者の女房のおかげだ。ある日、薄汚れた古太鼓を安く仕入れて帰ると、女 […]
34.寝床
旦那は筋金入りの義太夫好き。今宵も自宅で一席開こうと、使いの繁蔵に長屋じゅうへ声をかけさせる。ところが返事は「夜なべ」「臨月」「無尽」…と断りのオンパレード。癇癪を起こした旦那は「そんな了見なら明日までに長屋を立ち退け、 […]
33.井戸の茶碗
江戸の町を「くずぃ、お払い」と流す正直一徹の屑屋・清兵衛は、裏長屋の娘に呼び止められ、父・千代田卜斎(元は武家、今は清貧)の家で仏像の引き取りを頼まれる。目利きに自信がない清兵衛は「安く買い叩くのは忍びない」と200文で […]
32.手紙無筆
ある日、長屋の八五郎が手紙を抱えてご隠居を訪ねる。自分は読み書きができない“無筆”だから読んでほしい、というわけだ。ところが評判の物知りのご隠居、実は当人も無筆。面子を守ろうと「今日は鳥目で字が霞む」「他人に頼ってばかり […]
31.雑俳
長屋の八っつぁんが、羽振りのいい隠居の家へ冷やかし半分で訪ねる。隠居は「若いころ汗水流して働き、今は店を息子に譲って分米で暮らし、道楽は“俳諧”よ」ときっぱり。八っつぁんは「おいらも隠居の子分になりてえ、俳句はできるか」 […]
30.桃太郎
父親が寝つけない金坊を寝かしつけようと、「昔々、あるところに――」と『桃太郎』を語り出す。ところが金坊は「昔っていつ?元号は?」「あるところってどこ?」「爺さん婆さんの名前と年齢は?」と理屈を立てて次々に割り込み、話は一 […]
29.たらちね
長屋暮らしの独り者・八五郎が大家に呼ばれる。てっきり家賃の催促と思いきや、年頃で器量よし、嫁入り道具も揃った娘との縁談だという。ただし難点が一つ、言葉があまりに改まり過ぎて日常会話が通じない。大家自身、道で挨拶され、返す […]
28.狸札
子どもに石を投げられていた子狸を、通りすがりの八五郎が助ける。穴へ戻った子狸は親に「恩は返せ」と叱られ、夜更けに八五郎の長屋へ礼に来る。八五郎はちょうど困窮のまっ最中。翌朝、織物屋が集金に来るが、手元に金はない。子狸が「 […]
27.やかん
何かと知ったかぶりで人を見下すご隠居のところへ、八五郎が遊び半分に顔を出す。八五郎は「根問(ねどい)」――物の名の由来を根掘り葉掘り聞いてみようと企む。まずは魚偏の字から攻めるが、ご隠居はもっともらしい屁理屈で次々と切り […]