「エッグベネディクトより孤独のほうがまし」
僕がエッグベネディクトを初めて食べたのは、都内のホテルの一階にあるカフェだった。日曜日の朝、時計の針はまだ九時を少し過ぎたところだった。僕は前の晩にあまり眠れなかった。いろいろと考えごとをしていたからだ。でも、睡眠不足の […]
「将来どうするの?」って、こっちが聞きたいよ。
「どうして東大を出て、落語家になったんですか?」二ツ目になってからというもの、取材を受けるたびに必ず聞かれるこの質問。丁寧に聞かれる分だけ、ちょっとだけ胸に刺さるんです。僕の答えは、いつもシンプルです。「落語が好きだから […]
東大奇人群像④「ケロリン~医者編~」
ケロリンは六本木のクラブでボーイのバイトをしていて、期限切れのキープボトルをよく持ち帰ってきた。寮のラウンジにはヘネシーや山崎がずらり。すごい量だったが、僕とケロリンはふたりで全部飲んだ。僕は鍋係。近所にスーパーのいなげ […]
東大奇人群像④「ケロリン~九州男児編~」
ケロリンは、今でも僕の大親友だ。でも、連絡先も知らないし、生きているかどうかすら分からない。彼は大検を経て東大に入った珍しい男だったが、留年を繰り返し、結局卒業できず、最終学歴は「中卒」になった。まさに浮き沈みの激しい人 […]
「学生寮でどんちゃん騒ぎ」
東大には、東大生しか入れない専用の学生寮がある。光熱費込みで、なんと月1万円ちょっと。破格の安さだ。そのかわり、食事は出ないし、部屋は四畳程度とかなり狭い。あまりの狭さに「三鷹刑務所」と文句を言う学生もいた。けれど、住め […]
東大奇人群像③「タンクトップ毛虫男」
私は入学前、「東大生って、まじめで静かな人ばかりなんだろうな」と思っていた。けれど、それはとんでもない誤解だった。むしろ「変な人たちの動物園」といった方が近い。しかも、みんなそれをまったく気にしていない。他人の目をなんと […]
「噺の稽古、人生の余白」
落語家の命は、稽古にある――この言葉は、私のなかでゆっくりと沈殿し、日々の暮らしの底に静かに居座っています。稽古という営みは、やればやるほど、底なし沼のように足を取られます。もがけばもがくほど、知らぬ間に砂の穴に沈んでい […]
東大奇人群像②「わらじ男」
東大のキャンパスには、不思議な空気が流れている。それは学問の重厚な香りと、誰にも似ていない個人の匂いが、いつもどこかで混ざり合っているせいかもしれない。たとえば、中庭を歩いていると、「ペタ…ペタ…」という、古びた屋敷の縁 […]
東大奇人群像①「餃子男」
東大生活が始まった。田舎ではずっと、『嫌われる勇気』の先天的保持者されてきた私だが、東大ではなぜか妙に居心地がいい。理由は簡単。大学には、現代前衛芸術の作品のような才人がゴロゴロいたからだ。ちなみに、一般的な東大生のこと […]
「最上川舟唄」
2021年の春。世界がまだ重たい空気に包まれていたあの頃、私は師匠・春風亭昇太から、思いがけない一言をいただきました。「おめでとう。真打だよ。」その瞬間、不思議なくらい実感は湧きませんでした。長い階段を登ってきたはずなの […]