39.悋気の火の玉

浅草・花川戸の鼻緒問屋、立花屋の旦那は、「焼きざましの餅」のように固い男。若い頃から浮気ひとつせず、女房一筋であった。ところがある日、仲間の寄り合いの帰りに吉原へ誘われ、つい魔がさす。初めて遊んだその夜が忘れられず、翌晩 […]

38.お見立て

江戸の吉原にある花魁・喜瀬川のもとへ、田舎の大金持ちで純朴な男・杢兵衛(もくべえ)が通っていた。しかし喜瀬川は、この田舎者の客を心底嫌っており、次に来たら「病気で逢えない」と追い返すよう、店の男衆・喜助に命じる。 やがて […]

37.子は鎹(かすがい)

大工の熊五郎は腕は確かだが酒と女にだらしなく、遊女に入れあげては妻と喧嘩ばかり。ついに、息子の亀吉を連れておみつは家を出る。熊五郎は後悔しつつもどうにもできず、孤独の中で年月が過ぎる。遊女とも別れ、熊五郎は心を入れ替えて […]

36.妾馬

江戸の長屋に住む八五郎は、酒と女に弱い遊び人。その妹・鶴は町でも評判の器量よし。ある日、長屋の大家のもとへ立派な武士が訪ねてくる。駕籠で通りがかった殿様・赤井御門守が、鶴を見初めたというのだ。奉公に上がるという名目だが、 […]

35.火焔太鼓

古道具屋の甚兵衛は、正直でお調子者、しかも商い下手。儲け話にもつい本当のことを言って逃し、寒いのに家の火鉢まで売ってしまう始末。それでも店が回るのは、切れ者の女房のおかげだ。ある日、薄汚れた古太鼓を安く仕入れて帰ると、女 […]

34.寝床

旦那は筋金入りの義太夫好き。今宵も自宅で一席開こうと、使いの繁蔵に長屋じゅうへ声をかけさせる。ところが返事は「夜なべ」「臨月」「無尽」…と断りのオンパレード。癇癪を起こした旦那は「そんな了見なら明日までに長屋を立ち退け、 […]

33.井戸の茶碗

江戸の町を「くずぃ、お払い」と流す正直一徹の屑屋・清兵衛は、裏長屋の娘に呼び止められ、父・千代田卜斎(元は武家、今は清貧)の家で仏像の引き取りを頼まれる。目利きに自信がない清兵衛は「安く買い叩くのは忍びない」と200文で […]

32.手紙無筆

ある日、長屋の八五郎が手紙を抱えてご隠居を訪ねる。自分は読み書きができない“無筆”だから読んでほしい、というわけだ。ところが評判の物知りのご隠居、実は当人も無筆。面子を守ろうと「今日は鳥目で字が霞む」「他人に頼ってばかり […]

31.雑俳

長屋の八っつぁんが、羽振りのいい隠居の家へ冷やかし半分で訪ねる。隠居は「若いころ汗水流して働き、今は店を息子に譲って分米で暮らし、道楽は“俳諧”よ」ときっぱり。八っつぁんは「おいらも隠居の子分になりてえ、俳句はできるか」 […]

30.桃太郎

父親が寝つけない金坊を寝かしつけようと、「昔々、あるところに――」と『桃太郎』を語り出す。ところが金坊は「昔っていつ?元号は?」「あるところってどこ?」「爺さん婆さんの名前と年齢は?」と理屈を立てて次々に割り込み、話は一 […]