32.手紙無筆
ある日、長屋の八五郎が手紙を抱えてご隠居を訪ねる。自分は読み書きができない“無筆”だから読んでほしい、というわけだ。ところが評判の物知りのご隠居、実は当人も無筆。面子を守ろうと「今日は鳥目で字が霞む」「他人に頼ってばかり […]
31.雑俳
長屋の八っつぁんが、羽振りのいい隠居の家へ冷やかし半分で訪ねる。隠居は「若いころ汗水流して働き、今は店を息子に譲って分米で暮らし、道楽は“俳諧”よ」ときっぱり。八っつぁんは「おいらも隠居の子分になりてえ、俳句はできるか」 […]
30.桃太郎
父親が寝つけない金坊を寝かしつけようと、「昔々、あるところに――」と『桃太郎』を語り出す。ところが金坊は「昔っていつ?元号は?」「あるところってどこ?」「爺さん婆さんの名前と年齢は?」と理屈を立てて次々に割り込み、話は一 […]
29.たらちね
長屋暮らしの独り者・八五郎が大家に呼ばれる。てっきり家賃の催促と思いきや、年頃で器量よし、嫁入り道具も揃った娘との縁談だという。ただし難点が一つ、言葉があまりに改まり過ぎて日常会話が通じない。大家自身、道で挨拶され、返す […]
28.狸札
子どもに石を投げられていた子狸を、通りすがりの八五郎が助ける。穴へ戻った子狸は親に「恩は返せ」と叱られ、夜更けに八五郎の長屋へ礼に来る。八五郎はちょうど困窮のまっ最中。翌朝、織物屋が集金に来るが、手元に金はない。子狸が「 […]
27.やかん
何かと知ったかぶりで人を見下すご隠居のところへ、八五郎が遊び半分に顔を出す。八五郎は「根問(ねどい)」――物の名の由来を根掘り葉掘り聞いてみようと企む。まずは魚偏の字から攻めるが、ご隠居はもっともらしい屁理屈で次々と切り […]
26.からぬけ
与太郎が友人の源兵衛の家を訪れ、「なぞなぞで賭けをしよう」と持ちかける。最初の問題は「まっ黒で足が四本、角があって“モー”と鳴くものは?」。源兵衛は即答で「牛」。次は「黒くてくちばしがあって“カァー”と鳴くもの」。当然「 […]
25.道灌
八五郎がご隠居の家へ遊びに行くと、貼り雑ぜの屏風に一枚の絵。ご隠居曰く、それは戦国の武将・太田道灌の「山吹の里」の場面。狩りの帰りににわか雨(村雨)に遭った道灌が、雨具(蓑)を借りに粗末な家を訪ねると、若い娘が山吹の枝を […]
24.寿限無
長屋に男の子が生まれた八五郎夫婦。名前を巡って「めでたく長生きでき、食いっぱぐれのない名に」と檀那寺の和尚へ相談に行く。和尚は経文や伝承から縁起のよい語を次々に挙げる――「寿限無(寿命に限りなし)」「五劫のすりきれ(気の […]
23.子ほめ
八五郎がご隠居の家へやって来て、開口一番「ただの酒を飲ませてくれ」。実は「灘の酒」を聞き違えただけだが、図々しさにご隠居はあきれつつも説く。「本気でただで飲みたいなら、お世辞のひとつも言わなきゃダメだよ」。コツは二つ。大 […]
