14.宮戸川
小網町に住む質屋のせがれ・半七は、将棋に夢中で夜遅くなり、家に帰ると父親に締め出されてしまいます。そこへ同じ町内の幼なじみ・お花も、歌留多会から遅くなって帰り、同じように締め出されて困っていました。
行くあてもなく、お花は「半七さんのおじさんの家に泊めてもらいたい」と言い出します。しかしそのおじは「飲み込みの久太」と呼ばれる早合点の人。若い男女が一緒に訪ねれば、たちまち恋仲と思い込むのは目に見えています。半七は「ついて来るな」と断りますが、お花は、結局一緒に霊岸島のおじの家にやって来てしまいます。
夜更けに突然現れた甥と娘に、おじ夫婦はびっくり。「何も言うな、まかせろ」と勝手に解釈し、二人を二階に寝かせます。布団は一つしかなく、半七は「ここが境界線だ」と皺を寄せて線を作り、背中合わせで寝ようとしますが、二人とも眠れません。
外は雨、雷鳴が轟きます。稲妻におびえたお花は思わず半七の胸にしがみつきます。半七もつい背中に手を回す。漂う鬢付け油の匂い、乱れる襦袢……と、二人の関係が大きく変わっていく瞬間で場面は終わります。
「若い男女の初々しい関係が、偶然と状況によって一気に近づいていく瞬間」 を描いた。
偶然の一致:二人とも家に入れず、夜更けに出会う。
誤解を呼ぶ環境:早合点なおじ夫婦が「いい仲」と思い込む。
自然の力:雨と雷が二人を近づけるきっかけになる。
これらが重なり、背中合わせで必死に距離を取ろうとする半七と、怖さから自然に寄り添うお花。
さらに、落語らしいのは「直接的な描写を避け、聴き手の想像に任せる」点です。滑稽さと艶っぽさの境目で止める。