『替り目』1

『替り目』

酒好きの男が、いつものように居酒屋でたっぷり飲んで帰ってきます。

女房が「もう寝なさい」と促しても、男は「酒を持ってこい」と言ってきかず、仕方なく女房は酒を持ってきます。さらに「つまみはないのか」と要求。女房が「何もない、鼻でもつまんだら」と突っぱねると、男は「ココの佃煮があったはずだ」と食い下がります。ところがそれも女房が食べてしまっていた。「いただきました」と女言葉で答えろと説教する始末。ついに女房は根負けして、おでんを買いに出かけます。

その間、男は一人で酒をちびちび。酔った勢いで「いつもはバカって言ってるけど、本当はありがたい女房だ。心の中では”ありがとう”と思ってるんだ」と本音をつぶやきます。ところが、女房は、全部聞いてしまうのです。

そこへ、うどん屋の声が外から聞こえてきます。「うど〜ん、うど〜ん」と声を張り上げているのを呼び入れ、酒をお燗させ、ついでに一杯飲ませます。さらに友達の娘の結婚話など、どうでもいい長話に付き合わせるので、うどん屋は逃げ出します。男は「おい、待て!行くな!泥棒だ!」とわめき散らします。

そこへおでんを買って帰ってきた女房。うどん屋に酒だけ燗をつけさせ、肝心のうどんを食べていないと知って「かわいそうに」と思い、呼び止めようとします。しかしうどん屋は頑として戻ってきません。通りすがりの人が「呼んでるぞ」と声をかけても、「あそこの家は勘弁だ。今行ったらちょうど銚子の“替り目”だから、また酒だけ頼まれてうどんは食べてもらえない」と断るのです。

 

サゲ

「銚子の替り目でございます」

意味と魅力

『替り目』は一見ただの酔っ払い夫婦げんかの話ですが、実は亭主の「面と向かっては言えないけれど、本当は妻に感謝している」という気持ちが垣間見える。

しかし、最後は「うどん屋が逃げ出す」という滑稽なオチで笑わせ、観客をほっとさせる落語です。