二つ目、未完成。

前座から二つ目に昇進した日のことは、今でも忘れられません。兄弟子とともに昇太師匠の家に呼ばれ、師匠は無言で手を差し出しました。静かな握手――それが昇進の合図でした。

昇進の際、昇太師匠から「笑橋はどうだ?」と名前の改名を提案されましたが、思いがけない話に戸惑う僕を見て、「やっぱり今のままで」と笑ってくれました。

二つ目になると、着流しから紋付き羽織・袴の正装になり、雑用係からお茶を出してもらう側へ。とはいえ、ここからが本当の修行の始まりです。出番は減るので、自分で落語会を開いてお客様を集めなくてはなりません。居酒屋やお寺、時にはショッピングモールまで、どこでも舞台。終演後は“反省会”で、お客様から直接ご意見をいただくことも日常になりました。

そんな修行のさなか、フジテレビの深夜のクイズ番組『ソモサン・セッパ!』で経済評論家の勝間和代さんとご一緒する機会がありました。決勝では勝間さんにあっさり負けてしまいましたが、番組後にご縁ができ、交流が続いています。

あるとき勝間さんから「落語を聞きに行きたい」とメールをいただき、恐縮して「オポチュニティ・コスト」という経済用語で、「僕の落語に来るより、もっと有意義な時間の使い方があるのでは」とご遠慮したのですが、勝間さんは「未完成も面白い」と、国立演芸場の独演会(2013年7月7日)に本当に来てくださいました。

温かく見守ってくださる方々のおかげで、なんとか落語家を続けています。