31.雑俳

長屋の八っつぁんが、羽振りのいい隠居の家へ冷やかし半分で訪ねる。隠居は「若いころ汗水流して働き、今は店を息子に譲って分米で暮らし、道楽は“俳諧”よ」ときっぱり。八っつぁんは「おいらも隠居の子分になりてえ、俳句はできるか」と食いつく。隠居は「五七五に季題(季語)を入れ、見たままに一捻り」と手ほどきする。八っつぁんは「初雪や」をあたまにつけて、トンデモ迷句を量産。

 

文芸の民主化:名人の名句も、長屋の迷句も同じ座布団で遊べる—雑俳は町人の学びと誇り。

失敗の効能:駄洒落・やり過ぎが笑いを生み、正解の輪郭がくっきりする。

言葉の身体性:早口・言い換え・回文…口に出してはじめて見える“ことばの筋力”を稽古する噺。