26.からぬけ
与太郎が友人の源兵衛の家を訪れ、「なぞなぞで賭けをしよう」と持ちかける。最初の問題は「まっ黒で足が四本、角があって“モー”と鳴くものは?」。源兵衛は即答で「牛」。次は「黒くてくちばしがあって“カァー”と鳴くもの」。当然「カラス」。二問とも易しすぎて源兵衛が勝ち続ける。面白くない与太郎は「今度は難しいぞ」と高額を賭け、「長いのも短いのも、太いのも細いのもあり、つかむとヌルヌルすべるものは?」と出題。源兵衛は「俺がウナギと言えばヘビ、ヘビと言えばウナギって言うんだろ」と警戒するが、与太郎が「両方でもいいよ」と言うので「ウナギとヘビだ」と答える。ところが与太郎、「残念、アナゴでからぬけだ」と勝ち誇る。“からぬけ”とは“出し抜いた”の洒落。意外に冴えた与太郎に、源兵衛は悔しがり、さらに倍額で再戦。「今度はウナギ・ドジョウ・アナゴ全部言う」と自信満々で答えるが、与太郎の返しは「ずいき(芋茎)の腐ったやつ」。
バカと利口の逆転劇:与太郎の知恵ではなく、“ずらし”の勘が冴える。落語の定番「愚か者の知恵」構造。
言葉の「ぬるぬる」性:ウナギ・ドジョウ・アナゴのように、言葉も意味もすべって逃げる。
