何をしても裏目、女房にも見放され、ついに死のうとした男の前に、肋が浮くほど痩せた老人が現れる。「わしは死神。お前はまだ寿命ではない」。死神は奇妙な理を授ける――病人の傍らには必ず死神が座る。足元にいれば未だ寿命に非ず、呪 […]

41.らくだ

長屋一の乱暴者・馬(あだ名は“らくだ”)の家を兄貴分の半次が訪ねると、らくだは前夜の河豚に当たって死んでいた。葬式を出したいが金がない。そこへ通りかかった屑屋の久さんを半次が脅して使い走りにする。まず月番に香典を集めさせ […]

40.抜け雀

江戸時代、小田原宿の小さな旅籠に、みすぼらしい身なりの男がふらりと現れた。気弱な宿の主人が声をかけると、男は「泊まってやる、前金に百両預けよう」と言うが、実際は一文無し。十日も飲んだくれて寝るばかりの様子に、女房が痺れを […]

39.悋気の火の玉

浅草・花川戸の鼻緒問屋、立花屋の旦那は、「焼きざましの餅」のように固い男。若い頃から浮気ひとつせず、女房一筋であった。ところがある日、仲間の寄り合いの帰りに吉原へ誘われ、つい魔がさす。初めて遊んだその夜が忘れられず、翌晩 […]

38.お見立て

江戸の吉原にある花魁・喜瀬川のもとへ、田舎の大金持ちで純朴な男・杢兵衛(もくべえ)が通っていた。しかし喜瀬川は、この田舎者の客を心底嫌っており、次に来たら「病気で逢えない」と追い返すよう、店の男衆・喜助に命じる。 やがて […]

37.子は鎹(かすがい)

大工の熊五郎は腕は確かだが酒と女にだらしなく、遊女に入れあげては妻と喧嘩ばかり。ついに、息子の亀吉を連れておみつは家を出る。熊五郎は後悔しつつもどうにもできず、孤独の中で年月が過ぎる。遊女とも別れ、熊五郎は心を入れ替えて […]

36.妾馬

江戸の長屋に住む八五郎は、酒と女に弱い遊び人。その妹・鶴は町でも評判の器量よし。ある日、長屋の大家のもとへ立派な武士が訪ねてくる。駕籠で通りがかった殿様・赤井御門守が、鶴を見初めたというのだ。奉公に上がるという名目だが、 […]

35.火焔太鼓

古道具屋の甚兵衛は、正直でお調子者、しかも商い下手。儲け話にもつい本当のことを言って逃し、寒いのに家の火鉢まで売ってしまう始末。それでも店が回るのは、切れ者の女房のおかげだ。ある日、薄汚れた古太鼓を安く仕入れて帰ると、女 […]

34.寝床

旦那は筋金入りの義太夫好き。今宵も自宅で一席開こうと、使いの繁蔵に長屋じゅうへ声をかけさせる。ところが返事は「夜なべ」「臨月」「無尽」…と断りのオンパレード。癇癪を起こした旦那は「そんな了見なら明日までに長屋を立ち退け、 […]

33.井戸の茶碗

江戸の町を「くずぃ、お払い」と流す正直一徹の屑屋・清兵衛は、裏長屋の娘に呼び止められ、父・千代田卜斎(元は武家、今は清貧)の家で仏像の引き取りを頼まれる。目利きに自信がない清兵衛は「安く買い叩くのは忍びない」と200文で […]