5.長短

気が長くのんびり屋の「長さん」と、せっかちで短気な「短七」。気性は正反対だが、子どもの頃からの大の仲良しです。

ある日、長さんが短七の家を訪ねます。玄関でのんびりとうろうろしている長さんに、短七は「早く入れ」とイライラ。茶や饅頭を勧めても、長さんは牛のようにゆっくりと咀嚼。見ていられない短七は「こうやって食うんだ」と饅頭を丸飲みして、苦しそうに目を白黒させる始末。

続いて煙草をふかす長さんも、ぷか~ぷか~と悠長な吸い方。耐えきれない短七は「煙草はこうやってスパスパ吸って、こうやってポンと灰をはたくんだ」と威勢よく繰り返す。その調子に乗りすぎて、火玉が袖口の中にすぽっと落ちてしまいます。

長さんは恐る恐る「短さんは気が短いから、人に物を言われるのは嫌いだろうね」と切り出すと、短七は「そんなことはない。子どもの頃からの友達だ、悪いとこがあったら教えてくれ。怒らねえから」と請け合う。

それなら、と長さんが「さっきの火玉が袖に入って煙がもくもく出ている」と教えると、短七は「あぁことによらなくたって危ねえんだよ!もっと早く言え、こんなに焦げちまったじゃねぇか!」と怒鳴る。

長さんは「ほうら、言ったとおり怒った。だから言わないほうがよかったんだ」。

 

◆ 『長短』は、気の長い人と短気な人、正反対の性格が生む可笑しさ。

対比の妙
のんびりした長さんと、せっかちな短七のコントラストが鮮やかで、やり取り自体が笑いになります。

日常の共感
「ゆっくりすぎてイライラする」「せっかちすぎて失敗する」という両極端な性格は、誰もが心当たりがあり、共感しながら笑えます。

約束の裏切りとオチ
「怒らないから言え」と言っておきながら、結局怒鳴ってしまう。人間の本性。

演じ分けの妙味
二人の性格が真逆なため、噺家の腕によって「長さんのゆったり」「短七の早口」をどう演じ分けるかが見どころ。

「正反対だからこそ仲良しの二人」の姿を通じて、人間味と笑いをシンプルに楽しめる。