18.小言念仏

主人公は「小言幸兵衛」といった風な、毎朝仏壇の前で念仏を唱える男です。
ところが彼は、念仏の合間に絶えず家族へ小言を挟み込む。

「仏壇に蜘蛛の巣が張っている、掃除しろ、ナムアミダブツ」

「花を替えろ、水も替えろ、ナムアミダブツ」

「子どもを起こせ、学校に遅れるぞ、ナムアミダブツ」

「飯が焦げ臭い、隣の家か? 教えてやれ、ナムアミダブツ」

と次々に細かい指図をしながら、口は「南無阿弥陀仏」、心は家のあれこれに忙しい。

やがて外をドジョウ屋が通ると、「呼べ!」「安く買え!」「鍋に入れろ!」「酒を入れろ!」と調理法まで念仏の合間に命令。

 

 

形式と中身のズレ
 本来は清らかで厳粛な「念仏」が、生活臭ただよう小言と混じり合う。宗教的行為が「形骸化」し、日常と滑稽に入り交じる姿を風刺しています。

人間味と可笑しさ
 仏様の前でありながら「飯が焦げた」「赤ん坊を連れていけ」と家の雑事に気を取られる様子は、人間くさくてどこか憎めない。聴き手は「あるある」と共感しながら笑う。