15.道具屋

与太郎は、いつまでも遊んでばかりで働かないので、伯父に呼び出されます。
「何か商売をやってみろ。内緒でやっている“ど”のつく商売を譲ってやろう」と言われ、与太郎は「泥棒か!」と早とちり。実際には「道具屋(古道具を扱う露天商)」のことでした。

伯父から譲り受けた品は、火事場で拾った焼け残りやガラクタばかり。それを持って知り合いや露天仲間に教わりながら、与太郎は商売を始めます。

ところが客とのやりとりはすべてピント外れ。

鋸を「甘そうだ」と評されれば「なめたことがないから甘いか辛いかわからない」。

「焼きがなまくらだ」と言われれば「火事場で拾ったからよく焼けている」。

短刀は抜けずに「木刀です」。

「鉄砲の値は?」と聞かれて「ズドーン」と発射音で答える。

 

『道具屋』は、古い小咄を集めて構成されたオムニバス形式の落語で、特定の筋よりもやりとりの妙に重点が置かれています。

与太郎という人物像
→ 無邪気で愚直、言葉を字義通りにとらえるため、客との会話がすべてかみ合わない。「すれ違いの滑稽さ」

言葉遊びの連鎖
→ 「小便された」「代」「金」「値」など、商売の符丁や日常語を逆手にとった言葉遊びが満載。

学びの噺でもある
→ 与太郎が道具屋の世界に入り、商売を覚えていく過程が描かれることから、前座修行用の噺としても重宝されています。

聴衆は彼の失敗に呆れつつも笑い、どこか憎めない人間味に共感します。

「間の抜けたやりとりの連続が生む笑い」
「失敗続きでもどこか愛らしい与太郎の姿」