『真田小僧』2

『真田小僧』

ある日、町人の熊さんの息子・亀が父親に「お小遣いちょうだいよ」とせがみます。しかし熊さんは「だめだめ、やらねえ」と取り合いません。すると亀は「じゃあ、お母っさんにもらうから」と言い出します。熊さんが「お母っさんだって簡単にはくれねえぞ」と返すと、亀は「だいじょうぶ。この間、おとっつぁんが留守のときに来たおじさんの話をするって言えば、必ずくれるもん」と言い出します。

これを聞いて熊さんはびっくり。「な、なんだそれは?」と続きを聞きたがります。ところが亀はただでは教えない。「寄席だって木戸銭(入場料)を払ってから聞くんでしょ」と言い、金をせびります。仕方なく熊さんは5円渡します。

すると亀は「お母っさんはそのおじさんの手を取って、“うちのがいなくてちょうどよかった”って言って座敷にあげたんだよ」と話します。熊さんは動揺して「で、それからどうした」と続きをせかします。亀は「ここから先は追加で10円ね」とさらに金をねだり、熊さんはしぶしぶ渡します。

続きは「お母っさんが“遊びに行っておいで”と小遣いをくれたので、外に出たんだ」と言う。熊さんは「なんで一番大事なとこで外へ行っちまうんだ!」と怒ります。亀はさらに「気になって戻ってきて障子の隙間からのぞいた」と引っぱります。熊さんが「どうだった、何を見た」と身を乗り出すと、「ここは大事な切れ場だから、もう10円!」。

やむなく払うと、亀は「よく見たら、そのおじさんは横丁の按摩(あんま)さんだった」とオチをつけ、金を握って逃げてしまいます。

熊さんは「このガキにだまされた!」と怒り心頭。帰ってきた女房に話すと、女房は「うちの亀は近所の子より頭がいいよ」と笑います。しかし熊さんは「あんなのは知恵者じゃねえ。真田幸村の子どもの頃の方が立派だった」と説き始めます。

「十四の幸村は、城が敵に囲まれたとき、父・昌幸に“敵の旗印の永楽通宝を掲げて夜討ちをかければ、敵は味方同士で戦って混乱する”と進言した。それで真田は危機を脱し、家紋が六連銭になったんだ」と熱弁。

するとそこへ亀が帰ってきます。熊さんが「さっきの金返せ!」と怒ると、亀坊は「講釈を聞きに使っちゃった」と答えます。その講釈とは、なんと「真田三代記」。しかもすらすらと語ってみせるのです。

「六連銭ってどんな紋?」と亀が聞くので、熊さんは「上に3つ、下に3つ銭を並べた形だ」と説明。亀は「よく分からない」と何度も聞くので、熊さんは実際に小銭を並べて見せます。すると亀は「今度はあたいが並べる」と言い、銭をかき集め、全部持って外へ飛び出してしまう。

熊さんが「こん畜生、また講釈を聞きに行くのか!」と叫ぶと、亀は「今度は焼き芋を買ってくる!」と答えます。

熊さんは頭を抱えて、「ああ、いけねえ……うちの真田も薩摩へ落ちた」と嘆くのでした。

サゲ(オチ)

「うちの真田も薩摩へ落ちた」
六文の小銭でさつま芋を買うことと、幸村が落ち延びた伝説を重ねた。