稽古の延長線

「二つ目になったら、日本舞踊に講釈、三味線と唄、さらに歌舞伎鑑賞、それに俳句をやったほうがいい」山本進先生から、そんなふうに教えていただいたのが、二つ目になったばかり頃だった。すべて、落語に通じるお稽古。なるほどと納得し […]

拾う神

私が好きで、心から尊敬している人たちの話をしたい。「世の中捨てる神あれば、拾う神あり」というけれど、私は本当に恵まれていると思う。山本進先生は、生まれて初めて「言葉が通じた」と感じた人だ。たとえば、「機械費用が安いという […]

四十路の卒園証書

私は幼稚園から脱走した経験があり、最終学歴は“幼稚園中退”だと冗談めかして話すことがある。子どもの頃から団体行動が苦手で、落語を始めた理由も「一人でできるから」というのが正直なところだった。嫌なことがあれば、すぐに縁を切 […]

二十年の宝もの

私の好きな噺芸歴も20年になり、これまでに覚えたネタはおそらく150から200席ほどになると思う。「水屋の富」は南なん師匠に習った噺だ。「駒長」は馬石師匠に手ほどきを受けた。「盃の殿様」の道中づけは、山本先生が考えてくだ […]

記録はあるが、記憶はない

前座時代は、本当に忙しかった。月に40本の脇の仕事をこなし、とにかく頼まれた仕事は何でも引き受けていた。ギャラが安くても、決して手を抜かず、全力で働く。高座、太鼓、着物畳み、お茶出しと、何でもやった。脇の仕事だけして寄席 […]

ありがとう、子どもたち

小学生の前で落語をやるのは、本当に楽しい。みんな素直に笑ってくれるし、あらためて「落語って素晴らしいなあ」と思う。高座のあとは、落語の解説をして、みんなで蕎麦をすする体験もしてもらう。自分で高座に上がって落語をやる子ども […]

優しさに、間が合わず

コロナのとき、師匠から電話があった。「昇吉、元気か」私は、コロナ禍でも、テレビせとうちの経済番組『プライド』や、俳句の『プライド』、大学や執筆の仕事などで全く困っていなかった。むしろ、パーソナルスペースを侵してくる人も減 […]

私は間違い発見器

私にはひとつのへんな趣味がある。書籍やネット記事の間違いを見つけて、X(ツイッター)に載せることだ。私のXを見てほしい。新聞や辞書など、信頼性の高い文章の間違いを見つけた時は、自分の中でポイントが高い。現代文の読解が好き […]

「rakugology」

2018年は、ひとつの転機となった。放送大学の文京校で講師の依頼が来た。「人生が愉しくなる落語会」と題して、もう7年続いている。毎回定員オーバーし、抽選になる。例えば「芝浜における江戸の地理」「時そばにみる、江戸の時制、 […]

ちょっと違うな

「柳田格之進」という噺は、私にとって特別な一席である。隅田川馬石師匠から稽古をつけていただき、そこに山本進先生の温かな手が加わって、物語の芯に静かで確かな光が宿った。真打昇進の際にも、この噺で高座に臨んだ。まさに、勝負の […]