『新聞記者』

映画『新聞記者』(2019年・日本)
1. 作品の概要
監督: 藤井道人
主演: シム・ウンギョン、松坂桃李
受賞歴: 日本アカデミー賞 最優秀作品賞
本作は、政府の情報操作と報道の自由をテーマに、内閣情報調査室の官僚と新聞記者の視点から、日本の政治の闇を描いた作品である。

2. 作品のテーマ
① ジャーナリズムの使命
真実を報道することの困難さ
メディアの独立性と国家の圧力
② 政府の情報操作
内閣情報調査室(内調)がSNSを利用し、世論を誘導
批判的な報道を抑え込み、都合の良い情報を拡散
③ 公務員のジレンマ
主人公・杉原(松坂桃李)は、政府の一員でありながら、正義と権力の間で葛藤
内部告発のリスクと倫理観の対立
④ 日本社会における沈黙の文化
「見て見ぬふりをする」風潮
政治に対する無関心と、その結果としての権力の暴走
3. 物語の展開と考察
① 政府による情報操作
反政府デモ参加者の監視
記者の質問を制限し、報道をコントロール
② 新聞記者・吉岡の追及
大学新設計画の背後にある不正を追う
内調の監視を受けながらも、真実を暴こうとする
③ 官僚・杉原の転機
上司の自殺とその背景を知る
政府の隠蔽体質に疑問を持ち、葛藤する
新聞社に極秘情報を提供し、政権の闇を暴露
④ ラストの衝撃
新聞報道の後、杉原は政府から圧力を受ける
キャリアか正義かの選択を迫られる
4. モデルとなった実際の事件
① 森友・加計学園問題
政府の関与が疑われた公文書改ざん事件
財務省職員の自殺と内部告発
② メディアへの圧力
記者会見での質問制限
政府に批判的な記者への圧力
③ 政治とメディアの関係
記者クラブ制度による報道の自主規制
政府とメディアの癒着

視点

① 民主主義の危機
政府が情報をコントロールし、国民の知る権利を制限
記者が自由に質問できない社会の問題
② 個人の選択
正義を貫くことの難しさ
「自分が犠牲になってまで戦うべきか?」という葛藤

政府批判が強すぎて、一方的な視点になっている
フィクションと現実の境界が曖昧で、陰謀論的な要素がある
一部の設定(軍事転用の話など)が飛躍しすぎている