「生きがいについて」神谷美恵子
「生きがいについて」
神谷美恵子
みすず書房
p7人間から生きがいを奪うことほど残酷なことはなく、人間に生きがいを与えるほど大きな愛はない
p21生きがいを感じている人は他人に対してうらみやねたみを感じにくく、寛容でありやすい
p25苦労して得たものほど、大きな生きがい感をもたらす
p26身をささげるものが何もないというのは、欠乏を感じさsるものだろう。幸福とは独立性にあると一見思われるかも知れないが、実際はその逆さまなのだ。
p40自己に対するごまかしこそ、生きがい感をなにより損なうものである
p70愚痴こそ生きがい感の最大の敵である
p91生きがい7つ
①生存充実感、女性に多い、生きていることの嬉しさ
②変化と成長、学問、登山
③未来性、目標・夢・野心
④反響、共感、名誉、
⑤自由
⑥自己実現、独自性
⑦意味、存在意義の感じられるような仕事や使命
p110さまざまな欲望は犯罪行為の萌芽といえる
p128 実存的不安3つ
①死
②無意味さ
③罪
p131精神的苦悩は他人に打ち明けることによって軽くなる。苦しみの感情を概念化し、ことばの形にして表出するということが、苦悩と自己との間に距離をつくる。文学作品が生まれる経緯。
p150ストア哲学が持つ雄々しさ、忍耐を通してのみ到達される精神の深み
p154悲しみも英知に変わることがあり、それは仮に快楽をもたらすことはないにしても、幸福をもたらす
p163死というものを正面から自分の生のなかにとり入れてしまえば、死は案外人間の生の友にさえなってくれる。一切の現世的なものへの執着がむなしいということにひとは気づく。
p164自己の生命に対する防衛的配慮が一切必要でなくなった時こそ人はもっとも自由になる。もはやあらゆる虚飾は不要となり、現世で生きていくための功利的な配慮もいらなくなる。自分の本当のしたいこと、本当にしなければならないと思うことだけをすればいい。そのときにこそ、ひとはなんの気がねもなく、その生きた挙動へ向かう。そのなかからは驚くほど純粋な喜びが湧きあがりうる。
p169いろいろなことを試みても、空虚さと無意味さの感じがつきまとう
p175孤独なひと、はじき出された人はみな自然のふところに帰っていった。自然には内も外もなく、出る出されるもないからである。
p190内在的傾向の複雑なひとほど生きがいの置き換え現象がおこりやすい。適応性の幅の広さ、人格の弾力性、柔軟性、
p209精神化に縁遠いと思われるのは、することも話すことも全て型どおりで、習俗をそらで覚えているようなひとである。こういうひとは、職場や家庭、社交の場などでやるべきことを寸分の狂いなく、いわば自動的とも言えるほど能率の良さで果たせるが、習俗の力では対処できないような事態に当面したときには、まったく無力になる。
p275人間は多くの点からみて操り人形に過ぎず、真理にかかわるところは僅か
p285戦後直後は食べるためだけに狂奔しなければならない時代であったから、だれも生きがいについて自分に問いかけるゆとりもなかった。
p307人間の生き甲斐や意味感。宗教の大きな存在理由はそこにある。