27.やかん

何かと知ったかぶりで人を見下すご隠居のところへ、八五郎が遊び半分に顔を出す。八五郎は「根問(ねどい)」――物の名の由来を根掘り葉掘り聞いてみようと企む。まずは魚偏の字から攻めるが、ご隠居はもっともらしい屁理屈で次々と切り返す。「鰯は岩で小便したから“いわし”、鰈は平目の家来で“かれい”、鰻は鵜が難儀して“うなんぎ→うなぎ”」と、荒唐無稽ながら口調滑らか。八五郎は押されっぱなしで形勢不利。ならば日用品だと話題を転じ、「茶碗は? 土瓶は? 鉄瓶は?」と問えば、「茶を入れる、土で作る、鉄で作るから」――これは当たり前。ここで八五郎は勝負手、「じゃ、矢で出来ちゃいない“やかん”は?」。ご隠居は待ってましたと講釈口調に乗り、「昔は“水沸かし”。川中島の合戦で若武者が兜の代わりに被ったところ、飛んだ矢が“カーン”と当たり、やかんとなった」と得意満面。八五郎が「蓋は邪魔だろ」「つる(取っ手)はどうした」「口はどこ向く」と突っ込めば、「蓋は口にくわえて面、つるは顎に掛けて緒、口の穴は名乗りを通す」とさらにこじつけを重ねる。極めつけは「耳なら両方に要るだろう」に対し、「ない方は枕をつけて寝る方だ」。

 

 

知ったかのパロディ:筋の通らぬ語源を、口上の勢いで“もっともらしく”仕立てる可笑しさ。

言葉は道具:正しさより“場を制する話術”が勝つ、噺家のメタ表現。

根問の遊び:問い詰めても真理は捕まらない。