「親の反応、10秒フリーズ」

昇太師匠に弟子入りする前、「親には話してあるのか」と聞かれたとき、思わず「ハイ、伝えてあります!」と即答。嘘です。
うちの親は、昭和のホームドラマから抜け出してきたようなのん気な性格。就活でも「どこの会社に行くの?」と聞かれたのは卒業間際。とりあえず「金融系」と答えたら、「そう、よかったわね」で会話終了。どこの会社かも聞かれません。
さて、いよいよ正式に弟子入りする直前、真実を告げねばと決意し、電話をかけました。
「実は会社に入ったっていうのはウソで……落語家になりたいと思ってるんだ。春風亭昇太さんという師匠に弟子入りしたくて、会いに行ってきたんだ」
母、10秒沈黙。ときおり電話の向こうで「…ザザ…」と雑音だけが聞こえる。ついに実家のWi-Fiが切れたのかと思いました。(※実家のWi-Fiはよく切れます。)
その後、家の中ではちょっとした“夫婦漫才”が繰り広げられたとか。
数日して母から電話が。
「お父さんも明弘がやりたいようにすればいい、って言ってるから。体が健康で、人に迷惑をかけなければ、何をやってもいいって、お母さんたちは思っているからね」
さすが我が家。『健康第一、ご近所迷惑ゼロ』が家訓。

ただ、こういうストーリーはそのまま話すとウケが悪いので、飲み会やインタビューで「落語家になるとき親からなんて言われた?」と聞かれたときは、迷わず
「学費を返せって言われました」と、答えるようにしてます。ウケます。

でも実際は、中高は公立、塾にも行かず、大学の授業料も全額免除、生活費も家庭教師のバイトで稼いでいました。なので本当は「返すほど学費を払ってもらってない」んです。
Wi-Fiもつながらないような環境で育ちましたから。