『寄席花伝書』

『寄席花伝書』

人間社会の道しるべ落語道

春風亭柳昇

青也コミュニケーションズ

 

15

開演10分前には入場して下さい

 

20

虎造という人はレコードで売れた人で、声量はあまりない人であった。

 

24

パーティーは演っても聞いてないから嫌です

 

35

落語を初めて聞いた人にもよく分かるように演ってくれる落語家なので、初心者には歓迎されるが、何度も聞いている人には説明過多で煩わしくなる

 

36

つまり、自分は落語家である以上、落語の上手い人を尊敬し、下手な人を軽蔑したくなる

興行はまた別なのである

 

39

演芸会社から声のかからなかった落語家

石ばかり集めて「睦会」

名人、上手の演芸会社は一年ももたず潰れてしまった

 

40

世阿弥

「台本が書けなくてはいけない。また書けないまでも古い悪いところを改良する力がなくてはいけない」

 

42

めくり

客は演者が終わったあと、その余韻を楽しみたいのである。司会者がいたのでは余韻を楽しませてくれない。

 

44

この見出しであるが、昔は前座には書いてくれなかった。

私は自分で書いて出してしまった

 

46

この出ばやしも昔は前座には弾いてくれなかった。これも私には大いに不満で、幹部には内緒でお囃子さんに頼んで弾いてもらうことにした。

 

55

プロと天狗連はどう違うかと言えば、プロは「自分一人の高座ではない、皆と合わせねばならない」と思うから、時間が伸びていれば短く、また短く縮まっていれば長く、といつも全体のことを考える

 

64

道灌

傘がなく、濡れること

 

70

元禄元年(1688)四月、江戸中に「コロリ」という悪疫が流行った。

 

79

おもしろいことに落語は教わった当初は受けるのに、だんだんやっているうちに、ウケなくなるものである。これは、それは教わった当初は教えてくれた師匠の呼吸がのこっていてうけるのであるが、そのうちにじぶんというものがでてきてうけなくなるのである。

 

昔、美空ひばりさんは笠置しず子の物マネからスタート

 

86

稽古をしてもらうならうまい人から

稽古というものは落語の筋を教わると同時にあの呼吸も教えてもらえるのである

 

88

名人と言われた文楽

「前座さんにもどこか良い処があります。私はそれを盗むんです」

 

92

もし自分で台本が書けなかったら、お金を出して書いてもらうくらいの熱意がなければ、その人は新作落語はやらない方がよい

 

93

受けないネタをやっているとだんだん売れなくなる

 

94

芝居を観に行くとはっぱをかけられる

観ることによって知識が広がってくる

 

知性のない者は大物にならない

 

97

口惜しがる人は伸びる、ねたむ人はそれでおしまい

 

ねたみばかりで勉強しようとしないから何年たっても上達しない。Bさん(=談志師匠)は口惜しがって勉強したし、元々素質のある人だからどんどん上達した。

 

102

負けても負けても出て行く人と、後ろに隠れている人とでは、大きな差が出てきてしまうのだ。

 

103

私は以前、米丸さんや、柳好、右女助といった人とお互いに聞いてもらって直してもらったり直してあげたりしたことがあるが、これは一番良い方法だといまでも思っている。

 

110

ヨイショも芸のうち

 

111

売れている人とお付き合いをしろ

売れている人は自分の考えが良いから商売があたったのである

自然に売れるコツを覚えさせてくれる

 

112

使い古した古いネタは一年でも二年でも寝かして置くのも良い

 

113

前向きの姿勢が、その気持ちが舞台に現れ、舞台を愉しくさせるからお客さんも喜んでくれるのだ

 

114

ひとのテレビを見られない人は、その人に負けている証拠

口惜しいから見られないのだ

「よし、あいつの芸を見て良いところを盗ってやろう」と言える人は、その人より売れている人だと思う

 

116

売れないと身体をこわす

 

120

落語の稽古は歩いている時か、電車に乗っている時がいちばん良い

 

121

噺百ぺん

高座でお客さまの前で百ぺんくらいやらないと完成されない

 

123

迫力は芸のまずさをカバーする

年寄りがうまがってなまけてやる落語より、若手が力いっぱい演る落語のほうがよほど愉しい

 

125

人の芸の悪口をいうということは、その人に負けていないと思うから、追いつけ、追い越せという向上心がない。だからいつまでたってもその人の上にはならないのである。

 

131

売れないのは芸がまずいか、頭が悪いかのどちらかだ

 

みんな年をとると、売れなくなる

 

132

あの師匠は死ぬまで馬力があって、「今輔は衰えた」など遂に一度も言わせなかった。

古典では圓生である。生涯現役の華があった。

 

139

落語家になった以上、名人になるかお金を取れる人になるか

 

141

女房・子どもは自分の夫や父が名人上手になるように祈っているのに違いない。その期待に応えてあげるのが夫、父たる者の義務だと思う。

 

売れている人は謙虚

自分のものを見たり聞いたりしていたら「俺はうまい」とうぬぼれてはいられない

 

142

売れないと天狗になりがち

ラジオ、テレビにお呼びがないから自分のものを聴くチャンスがない。だから反省する機会がない

 

146

先代の名は継いでも、芸は継ぐな

①それ以上にうまくできないから

②先代の芸を知っている人は、先代が好きで惚れこんでいるから

③ネタがもう古いから

 

151

金を残しいや。金がないと馬鹿にされるさかいな。

 

お芝居は筋が良いものより、登場人物のはっきりしたものを出したほうがお客さんに受ける

 

152

親子の愛情、男女の恋愛、犯罪。この3つをテーマにして小説を書けば何年経っても古くならない。

 

154

昔の歌舞伎といえば女性達にとって何にも代えがたい楽しみ。着て行く着物を、あれにしようか、これにしようかと悩むのも最初の楽しみで、当日は朝早くから起きてお弁当を作り、お化粧も念入りに、胸をはずませて出掛け贔屓の役者に浮気を送り、心ゆくまで満足できる、そこに目を付けたのが円朝であった。

 

156

私は違うと思う。圓朝の人気をねたむ次元の低い、嫌がらせのほか何でもなかったと思う。

 

168

古典落語

久保田万太郎

昭和24年

 

170

久保田万太郎が、三代目金馬と喧嘩をして名をあげたために、計画的に喧嘩をしたのだと、楽屋で先輩たちが悪口をいっているのを何度も聞いた。

 

174

昭和38年「巷談本牧亭」で第50回の直木賞。

言うことも言うが、やることもやる。